圧縮性流体 レイリー流れ 〜実用計算編〜

前回の理論編では、受熱による流れの変化と「レイリー線」について学びました。今回は、実際の設計現場で遭遇する「一定の熱を加えたときに流せる最大流量は?」「その時の圧力条件は?」という具体的な問題を解きながら、レイリー流れの計算実務をマスターしましょう。


1. 実践問題:加熱管の流量特性

以下の条件において、管に流しうる最大流量と、それを実現するための背圧条件を求めます。

【問題例】

貯気槽(全圧 \(P_{01}=600\,\mathrm{[kPa \cdot abs}]\)、全温 \(T_{01}=303\,\text{[K]}\))の空気が先細ノズルで加速される。その後、断面積 \(A=4\,\text{[cm}^2]\) 一定の加熱管に流入する。管内で \(q=271\,\text{[kJ/kg]}\) の加熱を受けるとき、流しうる最大流量 \(\dot{m}_{\text{max}}\) を求める。また、そうなるための背圧 \(P_b\) を求めよ。

(空気:\(\gamma=1.4\), \(c_p=1005\,\text{[J/(kg·K)]}\), \(R=287.1\,\text{[J/(kg·K)]}\))

※この問題は「『圧縮性流体力学 ~内部流れの理論と解析~』 松尾一泰 著 理工学社」を参考にさせて頂いています。


2. 解法のステップ

レイリー流れで「最大流量」を問われた場合、それは**「出口でマッハ数が1に達している(サーマルチョーク)」**状態を指します。

STEP 1:出口の全温度 \(T_{02}\) を求める

与えられた受熱量 \(q\) から、出口での全温度を計算します。

$$T_{02} = T_{01} + \frac{q}{c_p} = 303 + \frac{271 \times 10^3}{1005} \approx 303 + 269.7 = 572.7\,\text{[K]}$$

STEP 2:入口マッハ数 \(M_1\) を特定する

最大流量時、出口マッハ数は \(M_2 = 1.0\) となります。つまり、出口状態が基準状態(\(^*\))となるため、\(T_{02} = T_0^*\) です。

これより、入口の全温度比を求めます。

$$\frac{T_{01}}{T_0^*} = \frac{T_{01}}{T_{02}} = \frac{303}{572.7} \approx 0.529$$

理論編で紹介した「全温度比とマッハ数の関係式」を用いて、\(M_1\) を逆算します。

$$\frac{T_0}{T_0^*} = \frac{2(\gamma+1)M^2}{(1+\gamma M^2)^2} \left( 1 + \frac{\gamma-1}{2}M^2 \right)$$

この式に \(\gamma=1.4, \text{比率}=0.529\) を代入して解きます。Excelのゴールシーク機能を用いると便利です。この時、加熱管の入口マッハ数 \(M_1 > 1\) が解となってしまう場合がありますが、題意から \(M_1\) は 1 より大きくはならないので、間違いです。初期値 \(M_1 = 0 \) などから始めると \(M_1 \approx 0.4\) と求まります。(レイリー関数表を参照して算出しても良いです。)

STEP 3:最大流量 \(\dot{m}_{\text{max}}\) の計算

入口(ノズル出口)の状態量を求めます。ノズル内は等エントロピー変化なので、

  • 入口静温 \(T_1\): \(T_1 = T_{01} / (1 + \frac{\gamma-1}{2}M_1^2) = 303 / (1 + 0.2 \times 0.4^2) \approx 293.6\,\text{[K]}\)
  • 入口静圧 \(P_1\): \(P_1 = P_{01} / (1 + \frac{\gamma-1}{2}M_1^2)^{\frac{\gamma}{\gamma-1}} = 600 / (1.032)^{3.5} \approx 537.1\,\mathrm{[kPa \cdot abs]}\)

これらを用いて、流量を計算します。

$$\dot{m} = \rho_1 A u_1 = \frac{P_1}{RT_1} \cdot A \cdot (M_1 \cdot a ) =\frac{P_1}{RT_1} \cdot A \cdot (M_1 \sqrt{\gamma R T_1})$$
※ここで \( a \) は音速 [m/s] を示す。

数値を代入すると:

$$\dot{m} = \frac{537100}{287.1 \times 293.6} \times 4 \times 10^{-4} \times (0.4 \sqrt{1.4 \times 287.1 \times 293.6}) \approx \mathbf{0.350\,\text{[kg/s]}}$$

STEP 4:背圧 \(P_b\) の条件

出口マッハ数が1の状態で、適切に管外へ放出されるためには、背圧 \(P_b\) は出口静圧 \(P_2(=P^*)\) 以下である必要があります。

\(M_1=0.4\) における静圧比 \(P_1/P^*\) を計算します。

$$\frac{P_1}{P^*} = \frac{1+\gamma}{1+\gamma M_1^2} = \frac{2.4}{1+1.4 \times 0.16} \approx 1.961$$

$$P_2 = P^* = \frac{P_1}{1.961} = \frac{537.1}{1.961} \approx 273.9 \,\mathrm{[kPa \cdot abs]}$$

したがって、条件は \(P_b \le 273.9\,\mathrm{[kPa \cdot abs]}\) となります。


3. 計算結果のまとめ

項目数値備考
入口マッハ数 \(M_1\)0.4加熱後、管出口でちょうど \(M=1\) になる速度
出口全温度 \(T_{02}\)\(572.7\,\text{[K]}\)\(T_{01}\) より約 \(270\,\text{[K]}\) 上昇
最大流量 \(\dot{m}_{\text{max}}\)\(0.350\,\text{[kg/s]}\)これ以上流すと入口条件が変わる
出口静圧 \(P_2\)\(273.9\,\mathrm{[kPa \cdot abs]}\)この値がチョークを維持する限界背圧

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